シンフォニーマーケティング株式会社の代表取締役 庭山氏の書籍「究極のBtoBマーケティング ABM アカウントベースドマーケティング」の書評です。
まずは、ABMの定義から
全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売り上げ最大化を目指す戦略的マーケティング(本書 P.15より)
と、本書では示されています。このマーケティングと営業の連携という言葉に惹かれて手に取ったのが、そもそものキッカケです。
何故、ABMなのか
顧客との関係が営業担当者という”人”だけの関わりであれば、その人の知識スキルに依存されてしまう。例えば、営業担当者であれば自分が担当している製品シリーズには詳しいが、その顧客が自社で扱っている他の製品の顕在的な顧客であった場合、この担当者を通じてコミュニケーションしている限り、他部門の製品を販売する機会は失われ続けることになる。
このようなことを防ぐために、点と点(人と人)との繋がりでしかなかった営業活動そのものをターゲット企業全体、つまり面で抑えていきましょうというのが、ABMの基本的な考え方です。日本企業の多くが製品種別ごとの事業部制を取っていることもあり、既存のアカウントであっても、他部門の製品、強いては全社の製品やサービスを売り込みするための仕組みが出来ていないのです。
また、マーケティング視点からみると、マーケティングがリードの数や行動を重視し、営業はリードの質や今期中の予算を確保しているのかを重視しています。これまでのマーケティング活動では、この壁を越えられなかったというのが、今現在もある大きな課題の一つです。
この組織の壁、職域の壁を如何に超えていくかが、ABMが期待されている大きな理由です。
ABMが成果を上げられる理由
ABMでは、これまでのマーケティングから営業への流れや考え方を変えていく必要があります。ABMにおいては、今までのようにマーケティングで得られたリードを営業に渡していくという流れではなく、営業がフォローしたいと希望した企業だけをスコアリングし、マーケティングをおこないます。ですので、高いSAL率や成約率に繋がり、成果が上がってくるという訳です。
一見すると、既存顧客だけにフォーカスしたマーケティング手法ではないかと思われますが、主軸は既存にありつつも、新規顧客の開拓にも生かせる仕組みであることは、第3章以降を読み解くことで明らかになってきますので、詳しくは本書をお読みいただければと思います。
この書籍に興味をもった理由
第1章で、筆者も述べられていますが、マーケティングと営業部門の狭間にある課題をクリアにするためにABMが効果的だということが、この書籍に興味を持った理由です。いつも、ご支援させて頂いているBtoBの製造業様においても日々話題に出てくる課題ですし、また製造業に限らず、多くの企業で起こりうるものでもあります。
この大きな課題に対して、以前からウェブなどで情報収集するなかで、ABMが大変有効な手立てになるように思えましたが、ウェブでは断片的な情報しか得られていないため、一から体系的に学びたいと思ったことも理由として挙げられます。
長年に渡るマーケティングと営業部門との狭間が埋まるのではないかと期待が持てつつも、ABMを理解し有効な手立てとして推進していくのは難しいと思います。それでも期待する結果を想像したときにはABMの道に突き進んでいくべきだろう、そう決意させてもらえる一冊です。