先日、「LINE 全世界利用者が初の減少」という記事が流れていました。他社が築いた盤上のコマをひっくり返すのは難しいということです。しかし、LINEは新たなマス(市場)を創造できるプレーヤーなのです。
LINEのビジネス状況
全世界利用者が初の減少という毎日新聞社の記事として掲載されていました。
毎日新聞『LINE 全世界利用者が初の減少 「頭打ち」傾向鮮明に』
http://mainichi.jp/articles/20170126/k00/00m/020/146000c?ck=1
ニューヨーク証券取引所にも登録されているLINEは、グローバルMAU(月間アクティブユーザー数)が、今四半期2億1700万人になり、前四半期を約300万人のマイナスになったという。内訳としては、日本が6600万人、アジア3ヶ国で1億1000万人となっています。つまり、LINEのユーザーの大半はアジア圏で成り立っているということです。
LINEのコンペティタとしては、Facebookに買収されたWhatsApp、Fecebookのメッセンジャー、中国テンセントのWeChatが挙げられます。WhatsAppで約10億人、WeChatで約8億人のユーザーがいるので、LINEの約2億人とは大きな差が開いていることは否めません。
出典: 24/7 interesting 「GLOBAL REACH OF MESSAGING APPS」
http://247interesting.tumblr.com/post/60259671817/global-reach-of-messaging-apps-june-2013-onavo
グローバル展開を進めてきたLINEでしたが、やはり盤上の駒をひっくり返すことは難しいということが証明されたことになります。インターネット上のサービスであれば、まだ可能性があるのではないかと思いますが、スマートフォン上のアプリとなれば事情は異なってきます。
想像に難しくないのですが、ユーザーが既に使っているアプリを辞めて、別のアプリを入れるには相当なハードルということです。というのも、メッセンジャーアプリにおける機能の差異(優位/不利)は多少なりともあるにせよ、基本的には、ユーザーどおしのコミュニケーションツールが基本機能です。つまり、一度作られたユーザー通しのネットワークを無視して、別のアプリへの誘導はこの上なく難しいということです。
LINEとWhatsAppとのビジネスの違い
現状、LINEとWhatsAppとはユーザー数で大きく水を空けられた状態ではありますが、実は売上高でみると、ほぼ同じ水準にあります。少し古いデータですが、2013年度のデータからWhatsAppの有料課金とユーザー数を掛け合わせると、約450億円の売上と推測されます。一方LINEの方は、当時518億円となっており、売上高で見るとLINEの方が優っていました。
これは、ビジネスモデルの違いで、LINEの場合はユーザーからも企業からも売上を得ており、対してWhatsAppはユーザーのみです。一見すると、LINEの方が優秀な企業に見えますが、LINEの社員数約670人に対して、WhatsAppは55人でした。つまり、LINEは収益を複雑化することで色々なところから売上を上げているのに比べ、WhatsAppはシンプルに顧客の利用料だけにしているのです。
これは、経営側から見ると、WhatsAppは経営効率(約10倍)がよくリスクが少ないのです。LINEは、収益をゲームやスタンプに依存しており、これらの人気の波に売上も左右されてしまうのです。一方、WhatsAppに関しては、ユーザーがメッセージをやり取りする目的だけでに費用を支払っているので、売上の波が少ないのです。
新たなビジネスを作れるのがLINEの強み
毎日新聞社の記事タイトルからすると、悲観的な見方をしてしまうLINEビジネスですが、確かにメッセンジャーアプリとしての伸びしろは盤上の空きスペースにしかありません。
ですが、WhatsAppとは違い、ユーザーの利用料以外の売上が見込めるという点では、悲観的になる必要はないと思います。
既に日本では盤石なシェアを築いていますので、他のアプリがコマをひっくり返すことは難しいのです。ですので、日本での基盤をベースに新たな分野でのアプリケーションやサービスは、いくらでも考えられるはずです。
そのための資金も潤沢にありますし、メッセンジャーアプリの市場をひっくり返すのであれば、スマートフォンのアプリからではなく、ウェブサービスから新たなものを持ちこみ、新たな市場を作ることも可能です。
盤上の駒をひっくり返すことはできませんが、新たなマスを作ることができるのがLINEの強みですので、今後の展開に期待しています。