コンテンツを受け取るレシピエント
見込み客が、あなたの顧客になるまでに、どのようなコミュニケーションをして、顧客はどのようなコンテンツを受け取っているのだろうか。成功となり得るには、購買プロセスやパーチェスファネル上の位置によって、適切な対応を行う必要がある。
パーチェスファネルの流れに沿って、それぞれのタイミングでどのようなコンテンツが必要なのかは、一般的な学習商材などを想像して頂くと分かり易いであろう。学習商材の場合、最初は学習すべきものの概要がわかるような内容から入っていき、顧客の理解度に応じた学習レベルに合わせて、教材内容のレベルを上げていくことで最後まで学習できるようにしていくのが一般的な流れとなっている。
これが、近年マーケティング業界でも言われるようになってきた、ナーチャリングという言葉の所以である。つまり、見込み客から顧客へとステージを遷移していただくためにナーチャリングという考え方が適しているのではないか、という話である。
あなたの会社が顧客と接するとき、このようなステップを踏めているのだろうか。いきなり、商品の詳細スペックや優位点などを説明していないだろうか。もちろん、顧客によっては、業界を詳しく熟知しており、場合によっては、あなたの営業担当者より製品に詳しい場合もある。しかし、そのような顧客ばかりだと考えているのであれば、本来顧客になり得るであろう見込み客を大きく逃していることを懸念せざるを得ない。
あなたのお客様が、その製品や製品群にどのくらい詳しいだろうか。また、購入を検討するにあたり、まだ情報収集の段階ではないだろうか。いずれにせよ、パーチェスファネルのどの段階にあるのか、その段階に応じたコミュニケーションや情報提供を行わなければ、見込み客をみすみす見逃していることを疑った方がいい。
今回は、そのパーチェスファネルの中でも最上位のファネルについて説明する。
興味関心の枠の外にいる顧客
見込み客にとって、まだ触れたことのない業界であれば、これらの製品の価値や性能などを一生懸命に伝えられたところで、見込み客に受け入れられる素地は全く無い。
Snow Peak社を参考にしてみよう。新潟県三条市に本社を置く、アウトドアの総合メーカーであり、世界に先駆けオートキャンプのスタイルを確立した企業としても有名である。自然の中で豊かで贅沢な時間を過ごすアウトドアの楽しみ方を確立してきている企業である。
Snow Peak社のコーポレートメッセージ「人生に、夜遊びを。」からも分かるように、ライフスタイルの中にアウトドアを含めた夜遊びを組み入れた人生を提案している。
コアなアウトドアファンを持つSnow Peak社ではあるが、アウトドア初心者やアウトドアに関心が無い顧客の取り組みも打ち出してきている。その中の一つが、Field Work Snow Peak Apparel Journalであり、テーマとして「アウトドアに接点を持たない方にアウトドアカルチャーの発信」を掲げて、アウトドアやそれらにまつわるストーリーを発信している。
このSnow Peak社の例からも分かるように、パーチェスファネルの上位にいる見込み客に対して製品を全面に押し出すことはしない。アウトドアフィールドという世界観を魅力的に伝え、その世界に興味を持って貰おうとしているのである。見込み客がアウトドアフィールドに触れる機会を増やすことで、最終的には自社の製品への興味関心へと繋いでいく、そのような流れを想定している。
このように、見込み客の多くは、あなたが販売している製品どころか、業界全体に対して興味関心が無い場合は多々ある。見込み客それぞれに、あなたの業界に入ってくるキッカケは様々であろう。アウトドアであれば、家族や知人に誘われて興味を持つようになったり、たまたま見ていた雑誌の特集であったり、映画やテレビで見た映像で虜になったのかも知れない。
いずれにせよ、他のメディアなどでブームが起きなければ、自社への関心は引き上がることはない。他力本願ではなく、自らのメディアを使って発信していくことで、長期的な視点で考えたときに価値のある施策となることは、Snow Peak社の例からも参考に出来るのでは無いか。
また、あなたの企業が情報発信力が無いのであれば、その業界のオピニオンリーダーに語って貰う方法もある。前述の Field Work Snow Peak Apparel Journal においても、コラムニストには外部のアウトドアフィールドで活躍されている方をライターとして引き入れいている。
あなたの会社や製品に関心を持って貰うためには、見込み客の一つ手前の状況を理解し、顧客視点で考えることが、パーチェスファネルの上位にいる見込み客を引き入れる事に繋がり、将来的な顧客を迎え入れる可能性を最大限に高めることに繋がるのである。
顧客の関心は製品には向かない
あなたの業界が、誰の身近にもあり常に触れられる状況であっても、ファネル最上位に当てるコンテンツは重要である。ここでは、自動車業界を例えに検討してみよう。自動車そのものは、所有されている方は当然のことながら、所有されていなくてもタクシーなど身近なものがあり、常に意識されている業界であるため、今回の例には適している業界の一つである。
ここでは、安全という軸で各社のコンテンツを確認していきたい。各社のウェブサイトを安全というキーワードで検索すると、安全”技術”の話が一番最初に引っかかる。もちろん、安全技術は重要なものであり、それをアピールすることは間違いではない。しかし、顧客が考える安全とは視点が異なるのではないだろうか。
各社どのページも、自社の安全技術への取り組み、つまりメーカー目線のコンテンツが提供されている。これは、顧客視点で見たときの安全というキーワードからは、ほど遠い。あなたが、自動車を運転する上で安全という言葉を気にするときは、どのようなシーンであろうか。例えば、積雪のあった日に運転することになったとき、子どもが生まれて一緒に乗車するときの乗せ方、自動車が故障したときに安全に対処するにはどうすればいいのか、このような事ではないだろうか。
勿論、これらのコンテンツが各社のウェブサイトには存在している。しかし、コンテンツが孤立しており、全社としての取り組みや安全技術への流れなどへと繋がっておらず、非常に勿体ない状況となっている。ここが問題点であると指摘したい。
顧客の視点で、子どもを車に乗せるときの安全を考えるとき、チャイルドシートの必要性、年齢に応じたシートの選び方、どの座席位置が適しているのか、近所のお友達を乗せる場合、車種ごとの注意点、子ども車酔いを軽減させる方法、泥だらけの子どもを乗せるときのポイント、安全な荷物の載せ方、子どもが寝てしまったときの注意点、車の乗降時の注意点や子どもへの指導方法などではないか。
夫婦の間に子どもが出来たので、利便性を考えたら車が欲しいけど、なんとなく不安があるという顧客層にどのようなメッセージを伝えたら良いのだろうか。何となく不安を解消するための柔らかいコンテンツから、具体的な事例などを元に安全に対する対処方法、また、それらを下支えする安全技術の紹介があり、顧客が気にしている安全を軸に考えたときにお勧めしる車種などが、分かりやすくスムーズに提供できれば、多くの自動車メーカーにとって新たな顧客の開拓に繋がりやすいのではないか。
巨大産業である自動車業界、その世界をリードしている日本企業であっても、その豊富な予算を上手く使えておらず、届けるべき顧客に伝わっていないのである。この指摘からも理解して頂けると思うが、決して予算が豊富である必要はなく、顧客視点で考えたときに必要となるコンテンツを必要なときに伝えられるかどうかである。
あなたの業界にいるコンペティタの多くは、このパーチェスファネルの上位にいる見込み客に伝えるためのコンテンツを有していないのでは無いだろうか。これが、マーケティング担当者としてのあなたの絶好のチャンスであり攻め処である。
あなたが顧客なら、どのようなメッセージを受け取りたいかを顧客視点で熟考し、どのようなコンテンツであれば興味関心事に繋がっていくのかが理解できたとき、あなたの目の前に多くの顧客が引き寄せられているであろう。
それが、マーケティング担当者である、あなたの仕事である。
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